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木
私は長に連れられて、村の中を歩いた。
外から見たときと同じく、石や岩によって作られた建物が多い。
木造建築は無い。昔の人なら聞いて驚くかもしれないが、この世界に木は無い。
無いというよりは、少なくとも私は生えている所を見たことがない。
だって、陸地のほとんどは砂漠なのだ。
村人の横を通り過ぎる度に、皆がこちらをチラチラと見てくる。
まるで有名人にでもなったような気分だ。
「旅人?」
長が私の横を歩きながら、話しかけてきた。
「何ですか?」
「滞在はどれぐらいの予定かのう?」
どの村も、長くいると退屈してくる。過去には、長くて1ヶ月ほどいたこともあったが、この村はそこまで価値があるようには見えない。
「そうですね…3日から5日ぐらいですね」
一呼吸開けて、私は続けた。
「もしかして、お邪魔ですか?」
「いや、そうではない。むしろ、歓迎しておる。村の者が好奇心旺盛でな、少し迷惑をかけるかもしれん」
ついさっきの出来事を思い出して、私は少しだけ苦笑いをした。
「慣れてますから」
これだけの人がいれば、さぞ街の管理も大変そうだろう。
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