愛の日には、苦い薬を……

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 雪あかりで微かに明るい公園を一瞬見渡すと、小雪はそっと慈英の肩に手を置いて、顔を近づける。 「──っ」  一瞬触れたのは唇だ。次の瞬間、小雪からキスをされたことに気付いて、慈英は目を丸くする。  ふぅ……。次の瞬間、小雪は慈英に冷たい呼気を吹き付けた。ゾクリとした感覚が体にこみ上げてきて、慈英はそのまま体が固まっていく感覚を味わう。 「あのね、小雪、雪女なんだ」  手袋を外した小雪の手は、氷そのものの様に冷たい。その指先でそっとジェイの頬を撫でていく。 「……うん、知ってたよ」  こう見えても、小雪が生きた年月はせいぜい数十年。それに対して妖狐である慈英は数百年生きている。 生きれば生きるほど妖力は強くなる……とばかりは限らないが、慈英はその生の長さに引けを取らないだけの妖力を持っているのだ。  冷気は寒さとして慈英は感じることは出来ないけれど、肌にピリピリと感じるのはきっと冷気なんだろうと慈英は思った。多分手を一振りすれば、この程度の妖力は霧散させられるのに、慈英はそっとそのまま力を抜いて、小雪の膝の上に頭を乗せる。 「……ジェイさん?」 「小雪ちゃんは、俺を凍らせたいの?」  頭を小雪の冷たい膝に乗せたまま、ゆっくりと慈英は手を伸ばし、自分を覗き込む小雪を見上げる。 「うん、ごめんね」  小雪は何も言い訳をしなかった。その事に慈英はなんだかホッとしている。 「そか、じゃあ、好きにしていいよ。今夜逢えるんだったら好きにしていいよ、って俺、小雪ちゃんに約束したもんね」  にっこりと笑った慈英を見て、何故か小雪は泣きそうな顔をする。
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