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暁月の話をまとめるとこういうことらしい。
このところずっと寒かったのは、北国から雪女達が大量に東京にやってきていたから。何故本来なら北国にいるはずの雪女達が東京に来ていたのか、というと。
「妹が……人質にされているんです。後、住んでいた山が何かレジャーランドを開発するとか言って、勝手に売り飛ばされそうになってて、それを売られないためにお金も必要で……」
妹を取り戻すために、そして住んでいた環境を維持するために、お金がとにかく必要だ。そういう状況に追い込まれた上で、東京でいなくなっても目立たない人間を誘っては、氷漬けにして、臓器売買のために、裏業界の人間に売り飛ばしているらしい。
「お金が溜まったら、妹と土地の権利書と一緒に渡してもらえることになっているんです。私達、共同体は皆、姉妹なんです。だから、ジェイさんの事が好きでも、妹は裏切れないんですっ」
小雪が必死でそういうと、はぁっと暁月がため息をつく。
「……騙されとる」
「え?」
「だよねえ」
両側からそう言われて、小雪は目をぱちぱちしながら、慈英と暁月の顔を確認する。
「小雪さんの話で、だいたい必要なところはわかったから、お館様に報告して、そっちの方は始末つけとくから、これ以上被害は出さんといて」
はぁっと小さくため息をつく暁月の唇から白い呼気が漏れている。それに対して、元々体温がないに等しい小雪の唇からは、白い息は漏れてこない。
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