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「あの……お二人って何者なんですか?」
その言葉に慈英は肩を竦めた。
「こっちは、陰陽師。ざっくり千年以上生きてるってのがちょっと特徴的。俺は……小雪ちゃんと同じ化生のモノ。元々は俺達は兄弟だったんだよ。ちょっとやらかして、うっかり俺だけ狐付きになっちゃったけどさ」
そう言った後、慈英はふぅっと深いため息をつく。
「だからもう大丈夫。後の始末は俺達が何とかするから。とりあえず仲間たちに無駄な殺生をしないように止めて。バレンタインデーにこだわってたってことは、今日最終納品日なんじゃないの?」
その言葉にはっと小雪が慈英の顔を見る。次の瞬間、小雪はふわりと宙に50センチほど浮かぶと、こくりと頷く。
「はい、やめるように皆に言ってきます。雪女だからって別に人を凍り付かせて楽しいわけじゃないんです。私たちは静かに故郷の山で姉妹仲良く、暮らせたらいいだけなんです……」
──それだけ言うと小雪は姿を消した。
慈英は姿を消した小雪のいた辺りをじっと見つめていた。そんな慈英を暁月は黙って見つめている。
「……あんな、兄者……」
その背中を見ているだけで、暁月は慈英が次に言うセリフがわかる気がした。
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