愛の日には、苦い薬を……

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「東京でこんなに雪が降るとこ見たのなんて、初めて」  そりゃ、まだ二十歳そこそこの小娘は、こんな景色を見たことはないやろうけど……と、暁月は思いつつ、それにしたって自分もこんな光景、何十年も見てないと再確認する。  さすがに異常気象だ。何かややこしい原因がなければいいのやけど、と思ってしまうのは、意外とこういう異常気象などは、表側からわからない『裏』事情があったりする場合も多いことを、経験的に暁月はよく知っているからだ。 「なんか色々とおかしいよね。物騒な事件も増えているらしいし……」  ちらりと、豆腐店の店内のテレビに、なごみが視線を向けている。そこには、 『雪の中の怪奇現象? 行方不明者続出』とワイドショーのテロップが踊っている。  それを見て、髪の毛を一筋引っ張られているような、チリチリとした妙な違和感を暁月は感じていた。 (面倒やな……)  思わず小さくため息を吐き出すと、うっかり変な手紙をもらわないようにと改めて心の中で祈る。だが、元々勘の鋭い暁月の事。大概そう言う予感は当たってしまうもので……。
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