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「暁月ぃ。お館様から、お手紙やで」
帰宅すると、部屋に上がり込み、勝手に台所を使って、甘酒を作って飲んでいる娘をみて、暁月はため息をついた。
年の頃は十五歳くらい。学生服を着て、高校生ぐらいに見える美少女の頭の上には、まるで慈英の様に耳が生えている。慈英は狐だが、こいつは猫の化生なのだ。とはいえ、『お館様』の仕事を引き受けることで、化生は化生でも、相当に徳が上がっていて、この神社の結界ぐらいはわけなく抜けてくる。
「猫。それだけ飲んだら、はよ帰りや」
少なくとも、猫がここにいると言う事は、猫がお館様と呼んでいる、暁月の属している陰陽師の組織のトップからの手紙が届いたと言う事だけは、間違いなくて。
(開けたら仕舞やろな……)
都度都度、厄介ごとを持ちかけてくる組織上位の存在が疎ましい。すでに千年も生きている年寄りを、たかだか百年も生きてないような小僧が顎で使うな、とも思っている。
「そうはいきまへんえ。読んでもろて、引き受けてもらわへん事には、うちは帰れまへんのや」
そう言いながら、猫は飄々とした顔で手のひらで湯呑を包んで、美味しそうに甘酒を飲んでいる。
妙な仕事を引き受けるのは気が引けるが、この猫に居付かれても面倒な事には変わらない。
「……わかった。手紙を読むから、渡しぃや」
暁月の言葉に、猫はにんまりと笑って学生服のカバンから、手紙を一つ出してきたのだった。
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