act.6 軍神トール

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act.6 軍神トール

人間の言葉を理解したのだろうか。 ファイアードレイクはふざけるなと言わんばかりに雄叫びを上げ、トールを喰い千切ろうと牙を剥いた。 トールは迫り来る牙をスルリと交わした後、怪物の背後に回る。 ベルの様に、背中を駆け上がり、目を狙うのかと思われた……が、次の瞬間。 太い腕で尻尾を掴み、そのまま上体を反らして、なんと……3トンはあろうファイアードレイクの体を持ち上げたのだ。 ウラヌスが目を点にする。 「はぁ?!! 嘘だろ?!!」 無理がある、めちゃくちゃだと喚く新兵たちをよそにトールはそのまま上体を反らし続ける。 ファイアードレイクの足が、空に向けられた。 ピタリ、と動きが止まる。 洞窟内に、威勢の良い声が反響する。 「うおおおおおぉぉ!! 」 瞬きする間だった。 尻尾を掴まれ、足を空に突き出されたファイアードレイクの頭が凄まじい衝撃音を響かせながら急降下し、地面に打ち付けられたのだ。 新兵達は口をあんぐりと開けたまま、声を発する者は誰ひとりとしていなかった。 ファイアードレイクは頭を強く打ち付けた衝撃で、気絶してしまっている。 これが、軍神トールと恐れられてる男の実力。 背に装備している剣を抜きもせずに、獰猛なファイアードレイクを数分で倒してしまったのだ。 魔法皇帝オーディン直属の兵士である【神兵】である、強さの証拠。 海老反りになっていた上体を起こし、パンパンッと手を払うトール。 「なんだ、案外軽いもんだな。ドラゴンというモノは」 ゲンガーは心の中で叫ぶ。 (はぁ? 軽いもんだと……? 3トンは余裕であるぞ??それを、軽い……だと? 俺なんて、スキル使って攻撃を防ぐのに、一杯一杯だったってのに……) ウラヌスも口には出さずに、心の中で呟く。 (神兵ってのは、化物かよ……) 驚き、思考が停止してしまっている他新兵達にトールは声を掛けた。 「さぁ、城に帰るぞ。誰か、動ける者は火山入り口の見張りに声をかけてやって来てくれ。あと、戦線離脱してどこかに散り散りになった新兵も探そう。なに、処罰なんてしないさ。彼らもヴァルハラ国の兵士、だ。全員、城に連れて帰る」
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