#十二月の朝から始まった

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#十二月の朝から始まった

ボクは留置場に拘留されている。 ねずみ色の壁、薄暗い蛍光灯、小さくて高い場所にある窓。 どれもテレビや映画で見たことのある風景とさほど変わりはない。 ボクの痛みは、両腕と手のひらにいくつかの切り傷がある程度で、入院の必要も手術の必要もなかった。傷によっては、何針かは縫ったらしいけれど。 どうやらボクはヤツを刺したようだ。「ようだ」というのは、ボクもさほどクッキリとココまでの顛末を覚えていないからである。 ユイを探しに繁華街をうろついていて、ヤツの顔がキラキラと宣伝されている看板を見つけた後、金物屋に行って包丁を買ったところまではなんとなく覚えているのだが、その後でそれを持ってホストクラブの店内に入ってからは、朧気な記憶しかないのだ。 きっと店内のフロアにヤツの姿を見つけて、その勢いで刺したのだろう。そしてヤツは死んだらしい。とうとうボクは殺人犯になってしまったのか。それでもいいと思った。ユイがボクの下を去った今、ボクには他に何も失うものはないのだから。 病院から留置場に身柄を移されてからというもの、毎日のように刑事がボクを取調室に呼び出して、色々と聞き出そうとする。     
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