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プロローグ:ガーディアンの伝承
かつて、この世界に生きる全ての生物にはガーディアンと呼ばれる守護神がついていたという。ラと呼ばれる最初のガーディアンが彼であり、全てのガーディアンの父である彼は守る事を何より誇りにしていた。しかし、その中の一つ……人間と呼ばれる種が進化を始めたとき、彼は初めて守ることを放棄した。
理由は至極簡単なことだ。
進化を始めた人間は一人に一体しかいないガーディアンに不満を覚え始めた。進化した生物が最初に持つ欲は妬み。人間たちは次第にお互いのガーディアンを求め、奪い会い始めた。
ラはそれを暫く傍観していた。
ガーディアンは主の命から産まれた命、主が死ねば死ぬしかない。だから誰も他人のガーディアンを奪うことなんて出来はしない。その上ガーディアンが死ねば主も死ぬ。奪い合いを続けてもただ殺し合うだけで誰もガーディアンを手に入れることは出来ない。
いつか、その虚しさに気付くだろう……ラはそう高を括っていた。
しかしその日は訪れた。人は見つけてしまう、ガーディアンを他者から引き剥がしても、ガーディアンと人、どちらも死なずに住む方法を。
ガーディアンを奪われた人間や動物は楽園を追われ、楽園には強欲な人間だけが残った。
ラはそれを嘆いた。
嘆きは風となり雨となり楽園を水の底に沈めた。
強欲な人間たちに嘆いた彼は人間を滅ぼそうとした。しかし、心よき人間もまた居る事を知って思い留まった。
心よき人間たちは深くラに頭を下げた。どんな償いでもすると。
ラは言った。
――守るということは簡単ではない。それでも我らは守る、それが誇りだからだ。もし償いたいというのであれば、我らの心を少しでもよいから理解せよ。お前たちにガーディアンの力を半分だけ与える。これからお前たちは主を持ち、そのものに一生を尽くすことで償いを果たせ。
そういうと自分の元を訪れた六人の人間にそれぞれ『火』『水』『雷』『風』『土』『木』の力を与えた。ラは眠りに付いた。
それ以来だ。人間のある種族の間にガーディアンの力を持つ人間が産まれるようになったのは。
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