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『2名ガ指名サレマシタ~』
彩香たち5人は作戦通り友也に2票、楓に3票入れた。この作戦は思いのほかうまく事が進み、友也が4票、楓に6票、彩香と詩織に1票とずつとなった。
今回は綺麗に分かれた。
『今回指名サレタノハ友也サン、楓サンデ~ス』
今回の勝負は友也の勝ちのはずだ。なのに楓の顔には恐れが無かった。
「彩香?どうしたの?顔色が悪いよ」
この場所に来てから最悪の事態を考えてしまうことが多くなった。
『前回ト同ジヨウニ2人ハ円ノ中心二集マッテ下サ~イ』
二人はゆっくりとした足取りで中心へと向かう。両者の手にはカード。友也の手には強力なAのカードが握られている。全員の視線が円の中心に集まったその時
『ソレデハカードヲ全員二見セテ下サ~イ』
「私はエース」
楓が言った。彩香は耳を疑った。急いで立ち上がり、楓のカードを奪い取って見る。他もつられて立ち上がる。楓の持っていたカードはクローバーのAだった。
「……同点だ」
友也が呟きながらカードを表にする。勝利を確信した楓の顔が一瞬にして凍りついた。
同点は両者とも消去……
「……嘘でしょ? 同点って……」
楓の言葉を遮るようにして、二人の体が飛び上がった。近くにいた彩香もその轟音と熱風に尻餅をついた。全て同じだった。花江の時のように。
「……そんな……」
詩織の視線の先にいる二人は目が最大に見開かれ、激しい痙攣を抑えられずにいた。
「い、いやああああ!!」
詩織が叫んでホールを飛び出て行った。続くように翔太も走って行った。
彩香は出て行く二人の背中を見つめていた。
部屋に残った人は倒れた二人に目を向けず、帰る者、立ち尽くす者。
そんな者には目をくれず、彩香は一人、部屋に戻り、ベッドの上に倒れこむ。
「こんなの全部嘘だよね……? これはただの悪い夢なんだよね……?」
彩香の心は限界だった。誰にも頼れずこの最悪のゲームに耐えるしかなかった。
まだ、生きているのは10人。この中から5人は死んでしまう。このゲームが始まるまで、死についてこんなにも考えたことはなかった。その死の恐怖が目の前に迫って離れようとしない。
「……う、うあぁぁぁっ」
その夜、彩香はこのゲームが始まってから初めて涙をこぼした。
2日目END
死亡者3名 生存者10名
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