三日目

2/9
前へ
/48ページ
次へ
「……どういうことだよ」 「……どうしてだよ」 「……」 「……おい、やめろ! やめろって!!」 「あぁぁぁあぁあ!!!」 彩香は起きてすぐに激しい頭痛に襲われた。頭を抑えてベッドにうずくまる。耳鳴りがこれまでにないくらい大きく高い音で彩香を苦しめた。その耳鳴りの音が小さくなっていくと、その音が廊下から聞こえる騒音に変わった。 壁の向こうから聞こえる騒ぎ声と床を駆ける足音。様子がおかしいことを彩香は素早く察知した。様子を見ようと立ち上がると、立ちくらみで足がふらついた。 「……もう、だめかも」 思わず弱気の一言が漏れてしまった。 体にムチを打って歩き出し、ゆっくり扉を開いて廊下を覗く。 「どうなってんの!?」 「……訳がわからない」 「なんで朝なのに死体があるんだよ・・・」 彩香は目を見開いて、部屋を飛び出した。そこにいる者の視線が集まった。全員が和也の死体に視線を向けた。和也の目には光がなく、口からは泡を吹いて壁に寄りかかった状態だった。 「……おい!もう1人倒れてるぞ!」 廊下の奥から健の声がした。 「そ、そんな……」 彩香は言葉に出来たのはこれしか無かった。そこには彩香の想い人、祐介がうつ伏せの状態で倒れていた。 「祐介! どうしたの! 起きて!」 詩織が駆けつけて、必死に声をかけている。 「……いや、祐介は生きている!まだ脈があるぞ!」 後から駆けつけた、誠が言い放った。どうやら、誠いわく祐介は気絶していただけのようだった。医者を目指している誠にはこのような対処は朝飯前のようだ。 「とりあえず祐介の部屋まで運ぼう」 こうして朝の騒動は静寂へと向かっていった。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加