17人が本棚に入れています
本棚に追加
「……痛った」
祐介が目を覚ます。
「起きたんだね」
彩香は祐介の身体の状態に安心した。部屋には二人のみ。
「どうして俺はベットの上で寝ているんだ?」
祐介は何か怯えているようだった。
「朝の事で何か覚えていることはない?」
短い沈黙が起きた。
「……和也……」
「和也?」
「和也に……殴られたんだ」
彩香は祐介が発した言葉の意味を理解するのに時間がかかった。祐介の右の頬が赤く少し腫れているようだった。
「……でも、なんで?」
「分からない。あいつが俺に何か言ってきたんだ」
「いつ? なんで言ったか覚えてる?」
「すまん。覚えていないんだ」
祐介は下を向いて答えると、部屋の扉が開いた。
「……祐介?」
入ってきたのは詩織だった。彩香は彼女を軽く睨みつける。
「祐介、大丈夫なの?」
「大丈夫。心配かけてごめんな」
その会話の横で聞いていた彩香は我慢の限界にきていた。
「……じゃあ和也はルール違反で死んだってことなのね」
二人の会話を遮るように声を出した。その声に、祐介は無言でうなずいた。
この時、彩香には疑問があったが聞かないことにして、早足で部屋を出た。
「……祐介は?!」
ホールへ移った彩香をみて、座っていた健が言った。
「祐介は目を覚ましたから大丈夫。少し部屋で休むって」
それを聞いて、健はほっとした様子だった。
「だけど、和也が……」
12席あった椅子の4席はホールを隅に置かれていた。ホールの雰囲気は暗いままだった。
「昨日の出来事があった時、物音とか、人影とか何か知っている人はいないのか?」
健の質問に意味はなかった。
「なんで、みんなが寝た後に、祐介と和也が廊下にいたんだろうな。和也が祐介に意味も分からず殴りかかったのも考えられない」
誠が顎に手をやって、悩んでいる様子で座っていた。誠特有の真剣に考えている時の姿勢だ。
「カード確認しないの?」
彩香の隣でそう言った麻結の手にはカードが握られていた。椅子の下からカードを剥がして、そのカードを横から見られないように手で覆い、ゆっくりそれを見た。
彩香の表情が一気に曇った。
クローバーのエース
最初のコメントを投稿しよう!