3時間の視線

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「君は私が認めたアーティストだ。想像力を研ぎ澄ませなさい――、想像して、自分自身で熱を満たしなさい」 「……っ、できま、せん」 そんな浅ましいことができるわけがなかった。 その静かな眼差しの前で、浅ましい想像して、間接的な自慰行為をしろというのだろうか。 直接触れて達するよりも、はるかに惨めだった。 「怜の身体は今どうなっているんだい」 「……や、めっ……」 阿賀野の視線が、屹立したそれに落とされる。 見つめる、触れる、撫でる、そして口づけを。 「……ぁっ……あ、いやっ、だ」 阿賀野の視線から唇を想像して、また己の欲望が熱をためこむ。 涙の先の阿賀野の姿は、滲んで何も見えなかった。 「せんせい、許して……」 「許しを請う必要なんて、何もないんだよ」 「……っ」 「この部屋に入った時から、君はずっと自由だったはずだ」 怜は潤んだ瞳を歪ませた。 ひどい。瞳の鎖につないで、自由を奪ったのは誰なのか。 遣る瀬無い思いを抱きながら、いつも絵を描くときのように、その情景を頭の中で再現する。
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