3時間の視線

32/40
598人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「もっと啼きなさい」 「あぁっ、…ぁっ…」 乳首をつまみ、それを胸の板でこねるように、押しつぶす。 ぽつり、ぽつりと、昂った先端が蜜で滲んでいく。 達したいのに、絶対的なそれだけは手に入れられず、逆に苦しい状況に追い込まれていく。 意思とは関係なしに組んだ腕が解けかける。 「触れるな」 普段は聞いた事もないきつい口調で言われ、身体が震える。 「いかせ、て……っ、くだ、さい」 すすり泣き、顔をぐちゃぐちゃにしながら、怜は懇願した。 絶頂の寸前まで来ているのに、直接刺激を与える術は何もない。 下肢が刺激を求め、小刻みに震えている。 「触れずに、達きなさい」 「できなっ……」 いっそ、その鋭い瞳の矢で、息の根を止めてほしかった。 身体を撫でることしかしない、その瞳が、今は恨めしい。 涙を滴らせながら、あられもない言葉で切願する。 「……っ、欲しいっ……もっと、……」 触れる刺激が、足りない。 身体が熱を持て余しているというのに、まだ足りない。 その時、終止符を打つように、冷たい声が注いだ。 「それなら、身体の奥で感じなさい」 事務所を辞めろと言った時と、変わらない口調で。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!