599人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「男性だって後ろで感じられる。神経が張り巡らされていて、きちんと快楽を得ることができる」
「……っ、せん、せい」
「足りないのなら、私の指を使いなさい」
もちろん想像で。そう付け加えて。
信じられない思いで、怜は阿賀野を見つめた。
そんな事は、おぼろげな知識しかないし、経験したこともない。
何より憧れていたその人の指を、自慰行為の想像に使うなんて。
しかも彼の、その目の前で。
「汚せ、ません……」
それだけはできなかった。
矜持が震える。
もう自我を保てるほど形をとどめていないそれを、これでもかというほど砕いて、この人はこれ以上、何を奪うのだろう。
「汚してかまわない、もっと欲しいんだろう」
「できま、……せん」
「汚しなさい」
「……っ、いや、です」
「怜――」
頑なに拒絶をしていると、阿賀野が絵の中にそっと口づけを落とした。
心臓を貫かれたようにして、怜は目を見開く。
「怜、愛している」
流し目に見つめられ、呼吸が止まる。
最初のコメントを投稿しよう!