2.好き好き大好き

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2.好き好き大好き

   注意力が散漫でも、他の事を考えていても、わたしには自分にとって最高の特技がある。  ――いつ何時どんなところでも、彼氏・三条宗助を発見できる。  嬉しくなる。会おうね、って約束してなくても、わたしが彼の家まで行かなくても、彼を世界の中で見つけることが出来る。彼はいつだってわたしには輝いて見える。  とはいえ、宗助くんは特別目立つわけではない、と思う。細身で、身長は175cmぐらい。髪は真っ黒でさらりとしたショートヘア。眼鏡をかけている。あまり喋るほうではないけれど、聞き上手なので会話が無くならない。基本無表情でちょっと不機嫌そうに見えるけど、相槌と一緒に見せてくれる、ふわっとした笑顔がわたしは大好き。大好きすぎて、わたしには地球上の人の中でだれより格好良く見える。  生まれる前から一緒に居た。わたしのお父さん、わたしが生まれたとき一年で三千枚ぐらい写真を撮っていた。お母さんが「保管に困るから少し減らして。」と注意して二歳以降一年千枚ぐらいに減ったけど、五歳までかなりの量の写真がある。その写真のほとんどに、宗助くんが写っていた。 宗助くんが生まれて半年後にわたしが生まれた。学年は別だけど、宗助くんが物心つく前にわたしが生まれ、わたしも物心ついたら宗助君が居た。ずっと一緒が当たり前で過ごしてきた。  宗助くんの三条家とわが眞鍋家は、お父さん同士が高校生の頃知り合い、そこからずっと三十年以上親友だ。お父さん同士はなんでもないことを延々何時間も喋っている。わたしには全く面白いと思えないことでも笑っている。ちょっと目を合わせただけでなんとなく言いたいことが分かることもあるらしい。  うちのお父さんは出張に行く度  「これ絶対三条好きなやつだから。」  とお土産を自宅用以上に買ってきて、夜十一時ぐらいでも渡しに行こうとする。わたしが明日持って行くから、となだめると、  「ずるい!お父さん明日も仕事!お父さんだって三条のみんなに会いたいのに!」  と、やきもちを妬かれる。でも、こういう時わたしはこの人の娘なんだな、と深く感じる。つまり、言いたいことが分かる。早く三条のおじさんの喜ぶ顔が見たいのだろう。  そんなわたしの父さんと、宗助くんのお父さんには、若い頃した約束があった。  "お互いに子供が出来たら、子供同士を結婚させよう。″
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