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「そうだ、それでいい!」
リラとルピが鉄甲騎の足下を無事に潜り抜け、戦場から遠ざかる様子を確認したルワンは、自分もその場を離れようとするが、
「調子に乗るなよ、猫野郎!」
と、もう一方の馬車に乗る御者が正気に戻ったのか、ルワンが射撃を止めた隙を狙い、こちらも機関銃に依る反撃に転じるが、
「甘いっ!」
ケモノビトの反射神経故、瞬時に反応したルワンが鉛玉を吐き出し続ける銃口を、自分を狙う敵機関銃に向ける。
銃弾は防楯に阻まれるものの、その衝撃は敵の射撃を確実に妨害していた。
ルワンが狙った敵機関銃の背後では、サタナーンが鉤爪騎を相手に奮闘している。
その戦闘は、こちらも思惑が外れたのか、突き出した剣がその鉤爪により中程から叩き折られていた。
それでも、騎士の甲冑を思わせる鉄甲騎は戦意を失わず、敵機に格闘戦を挑み、組み付くことでその大きな爪を封じる作戦に出たのだ。
関節から余剰の蒸気を漏らし、時折、負担の掛かる関節から嫌な音と火花を散らしながら、二騎の巨人同士による取っ組み合いは続いていた。
それは、ルワンにとって好都合である。
「もう少し、そのままじゃれついていろ!」
そう叫びながら、猫少年は機関銃を撃ち続けるが、その重く連続した銃声が不意に止んだ。
ルワンが引き金から手を離したのではない。
音が消えた後、何度も引き金をカチカチと鳴らすが、何も答えない銃に、ルワンは状況を悟らされる。
「弾切れ……だと!?」
そう、機関銃は弾切れを起こしたのだ。
実は、その足下には予備の弾帯が用意されているのだが、そも、機関銃の使い方を完全に知っているわけではない彼に、どうすることも出来ない。
それが隙を呼んだ。
ルワンが身を隠していた機関銃の防楯に衝撃が走る。立ち直った敵機関銃からの銃弾による猛攻である。今、この場を離れたら、間違いなく体中が蜂の巣にされてしまうだろう。
更に悪いことに、スレイドラがルワンの後ろに回り込んでいたのだ。
「この……猫餓鬼が……」
憎悪の視線とともに向けられた長銃に気付くものの、敵機関銃の銃弾を防いでいる防楯から抜けることが出来ないルワン。
防ぐ手段はない。
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