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騙されて囚われて
シャムル王都――
セレイの感じた喜び、感動は、着いたその日の内に、ものの見事に打ちのめされてしまう。
そう、セレイは人里の[恐ろしさ]を目の当たりにすることとなってしまった。
王都に着いたセレイが最初に知った現実は、
働かなければ何も得られない――
そして、その為に必要な、
仕事がない――
と云うことだった。
頭ではわかっていることだった。
セレイとて、故郷では親をはじめとする群れの仲間と共に狩猟と採取に勤しんでいた。
しかし、同じ[働く]と言っても、都会の労働は、故郷のそれとは違うものである。
いざ街に出てみると、何処で仕事を得るのか、どうすれば飛脚の仕事を受けられるのか、何もわかってはいなかったのだ。
もし、ここでセレイが数日ほど粘れば、もしかしたら、この街で生きるための情報――例えば、飛脚の組合に参加する方法など、を手に入れることが出来るかも知れない。あるいは、数日後に通るであろう、人の良い冒険商人に拾って貰えたかも知れない。
そして、セレイにはそれらを待つだけの忍耐力もあったはずだ。
ところが、世の中というものは、時に、理不尽を動力にして回っている、としか云えない事もある。
セレイは、この日同時に、人里はツバサビト、いや、全ての[人ならざるもの]にとって、決して優しくない世界であることを、身を以て知ることになってしまったのだ。
打ちのめされたセレイは、たった一日で音を上げていた。
それだけではない
最悪なことに、この翼持つ少女は、この街に来て初めて、異種族を嫌うものたちが存在するという衝撃的な事実を知ることとなっていたのだ。
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