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「この店に入るんじゃないよ! この鳥娘!」
恰幅の良い年増女が食堂の入り口で踏ん反り返る。
その前で倒れているのは、おそらくは突き飛ばされたか、投げ飛ばされたセレイであろうか。
「いてて……」
肩でも打ったのか、さすりながら立ち上がるセレイに追い打ちを掛ける言葉が投げかけられる。
「とっとと失せな亜人! 汚い羽を街に撒き散らすんじゃないよ!」
「………!?」
セレイはその言葉の意味を理解するのに、時間が掛かった。
――汚い? アタシの羽が?……
セレイは、暫し呆然となった。
周りで起きている騒ぎも、耳に入らなかった。
「おい、いくら何でもその言葉はないだろう……!?」
見かねた店の客が年増女に抗議するも、
「五月蠅いねぇ、文句があるなら店から出ていきな! お代は払ってもらうけどね!」
と、強気で返し、その言葉に反発して人々が集まり、年増女への抗議は更に強まっている。それを見る限り、この街の人々全てが異種族への嫌悪感を持っているわけではなく、セレイに対する態度は、この年増女のような、ごく一部のものに限られるようだ。しかし……
「……あれ、ツバサビトの女の子は……?」
その事を知らないセレイは、この場からいなくなっていた。
まるで、逃げるように……
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