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気が付くと、朝、目覚めたら周りの景色が一変していたのだ。
「ここ……どこ?」
「気が付いたかい?」
セレイの呟きに間髪入れず、スレイドラと名乗っていた男の声が壁越しに聞こえてきた。改めて周りを見渡すと、ここが小さな小屋のような場所であることがわかる。
「違うよ? 君は馬車に乗せられたんだ」
まるで心を読んだかのように、スレイドラの声が聞こえた。
「……詩人さん? どういう……」
「言ったじゃないか……今日から君は僕たちと一緒に[楽園]を目指すんだ。君たち亜人は新しいご主人様に迎えられ、僕たちは謝礼を頂戴する……お互い、幸せを掴むんだよ」
「それって……」
「わかんねぇのかよ! 俺たちは売り物にされたってことだよ!」
不意に怒声が聞こえた。
声の方に目を向けると、部屋の反対側の片隅に、一人の少年が足を投げ出し、片膝を立ててその上に腕を乗せていた。見たところ、白い毛並みを持つ猫科の様相を持つ種族〈ビョウ〉のようだ。年の頃はセレイと同じか、一つくらい上であろうか。暗い小屋の中で、外からの光を反射しているのか、二つの瞳だけが異様に輝いている。
「売り物って……」
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