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そう言って、セレイが改めて少年を見ると、貫頭衣を着せられた彼の右足には、鎖で繋がれた錘が着けられていた。
そして、同じ錘が自分にも……しかも、二つも付けられていたのだ。
「あぁ、用心のため、お嬢ちゃんには二つ、付けさせて貰ったよ? 何せ、一度空に飛び立てば、君たち翼の亜人を再び捕まえるのは不可能になるからねぇ……」
夕べと変わらない、優しい口調のまま話すスレイドラだが、もし、その表情をセレイが見ることが出来れば、その顔が豹変していることに気付いただろう。
「アタシ、騙されたの?」
セレイの小さな呟きに答える声はなかった。
これって、夢だよね――
信じられない思いであった。
この状況を受け入れたくはなかった。
しかし、足に付けられた、錘が繋がる金属の輪がもたらす冷たい感触は確かにある。
それでも、ツバサビトの少女は信じたくなかった。これがたちの悪い悪夢であると、そう思いたかった。
翼を広げれば、いつでも、何処にでも飛んでいける――
しかし、その翼が封じられれば――空を取り上げられたツバサビトは、もはや何も出来ない、無力な存在でしかない――
それでも――
――こんなことで、諦めてたまるか!!
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