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異変は、外の人狩りたちも気付いていた。
「集音器に感! 周囲に鉄甲騎らしき存在有り。その数、不明」
おそらくは在籍時の癖であろうか、機関士が操縦士に軍隊口調で伝達する。
「[大使殿]……」
拡声器を通じた操縦士からの報告に、スレイドラは周囲を警戒するよう指示を出すものの、既に遅かった。
周囲の岩場から、明らかに敵意を込めた銃口を向けてくる男達の姿が現われた。数はおそらく二十人は下らないだろう。その統一感のない風貌、様相から、彼等が警吏でも軍隊でもないことが見て取れる。
その手に構えた長銃は、やや旧式の鎖閂式銃である。
敵の戦力はそれだけではない。
辺りに、彼等にとって聞き慣れた咆吼が聞こえてきた。
それは、鉄甲騎の主動力である焔玉機関の立てる音――
一行の側面、峡谷を囲む崖の上から鋼鉄の巨人――鉄甲騎がその姿を現わしたのだ。
その数、三騎――
威嚇するかのように機関の駆動音をしきりに立てながら、眼下の敵を見下ろす鋼鉄の巨人達――
それぞれの機体は他の賊と同様に統一感はなく、その外観も、隠す気もない継ぎ接ぎだらけの装甲や、整備不良が原因と思われる機関の不協和音などから、破壊された機体同士で再生した脚甲騎であると思われる。
中には、操縦室が露出した機体や、腕の長さが微妙に異なるものさえいる。
敵方の鉄甲騎が手にした得物は、一騎は鎚矛、操縦室が露出した小型機は短槍、残る一騎は、長い右腕に巨大な鉤爪を光らせていた。
相手は人数的にも数が多く、その上、鉄甲騎の数も相手の方が一騎ほど多い。明らかに、不利なのは人狩り側であった。
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