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[魔術]で灯された様々な色を放つ照明の中、広場では怪しい面を付けた神官達や、橙色の袈裟を着た僧侶達が、護摩壇の前で祈りを捧げ、あるいは経文を謡うように読み上げ、その周りでは、二人掛かりで演じられる、金銀で飾られた獅子と、禍々しい魔女らしきものを模った被り物同士による仮面劇が、楽団の奏でる金楽器に合わせて舞われ、それを人々が真剣な面持ちで見つめていた。
他にも、様々な品々を売る露店や、そこで買ってもらった、初めて食べる甘い砂糖菓子など、見るもの聞くものすべてが、セレイにとっては初めての物ばかりである。
何より、セレイが驚いたのは、人々の様相である
普段は簡単な貫頭衣くらいしか纏わぬ漁村の人々が、この日ばかりの贅沢として彩りの鮮やかな布に包まれ、腕や首には、きらきらと眩しい金属や貴石を繋いだ装飾品で飾られている。その美しさは、わずかに胸と腰を隠すだけの布しか纏わないツバサビトの少女には、眩しく見えた。
唯一、装飾と呼べるのは、片足首に付けられた、青い石を一つ繋いだだけの簡単な物、それも、あくまで風の精霊と会話をする[まじない]を使うためだけの物でしかない。
「あんなもので全身を覆ったら、重たくて飛べやしないよ」
人が〈服〉と呼ぶそれをねだったセレイに、母親は笑いながらそう答えた。
しかし、セレイは憧れを捨てることが出来なかった。
人々の纏う、様々な色を見せる服飾――
果実とは違う甘さを持つ菓子――
自分たちでは決して生み出せない、様々な道具や機械――
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