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馬車の中――
「畜生、この手枷が外れれば……!?」
ルワンは、後ろ手に掛けられた手枷と格闘するものの、どうにもならない。
外の様子は見えないが、喧しく聞こえてくる機械の音、銃声や怒号から、人狩り達が何者かの襲撃を受けていることは確かである。
「もしかしたら、近くの国のお役人さまが彼等を襲撃したとか?」
リラの楽観的とも取れる意見を、ルワンは「無ぇよ」と切り捨てる。
「それなら、それっぽい口上を言ってくるモンだ。仮にも、あいつら貴族の振りしてんだから、尚更だ! たぶん、今襲ってきている奴らは同じ悪党だ。連中が勝ったところで、俺たちの運命は変わらねぇ……」
その後、暫し沈黙が続く。
その間にも、外の戦闘音は止むことがない。
「ねぇ、アンタ、針金まだ隠し持ってない? やり方教えてくれれば、アタシが腕の輪っか、外して上げよっか?」
沈黙に耐えられなくなったセレイが思わず口走った言葉だが、それに対してもまた、ルワンは首を横に振る。
「隠していた針金は全部、捨てられた。それに、ツバサビトの手じゃ、こんな細かいことは出来やしねぇ……」
「やってみなけりゃ、解らないでしょう!?」
「だから、そもそも針金がねぇんだょ!」
苛立ちが募り、会話も喧嘩腰になってしまう。
そして、リラもまた、
「……せめて、蒼石の一つもあったなら……」
と、弱音を吐いてしまう。
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