セレイの決意

2/16
前へ
/144ページ
次へ
「そのまま北に逃げろ!」  そう叫んだルワンは、そのまま馬車の屋根に登る。その上には、機関銃を一心不乱で打ち続ける御者の後ろ姿があった。 「どけ!」  不意を打ち、ルワンの回し蹴りが炸裂し、悲鳴と共に御者は地面へと落下する。それを見届けたルワンは、今度は自分が固定された機関銃の引き金を引いた。 「……喰らえ!!」  ルワンは、暴れる機関銃の銃口を、地上で反撃を続ける人狩りどもに向けた。 「そら、踊れ踊れぇ―!!」 「ひぃ――――――っ!!」 「お助け―――――っ!!」  その(なまり)の雨あられは命中することはなかったものの、足下で跳ねる銃弾に人狩りどもは混乱に(おちい)る。一方、その敵対者である賊は、何が起きたか理解出来ず、呆然となる。  そして、何故かリラまでがルワンの行動に驚愕(きょうがく)する。 「そんな……ルワンさん!?」 「俺が援護するから、お前達は先に行け!……この先に、連中の馬が居るはずだから、それを奪うんだ!!」 「ルワンさん…………」  実は、ルワンの行動は段取りになかったことであった。 「いいから走れっ!! 心配するな、俺も後から逃げる!!」  叫びながら、ルワンは機関銃を撃ち続ける。 「きっと……きっとですよ!!」 「ルワン……!!」  後ろ髪を引かれるように、リラは走り出す。心配のあまり、いつまでもルワンに目を向けるルピを背負っているが、それでもハーフとは云え〈ロウ〉であり、その疾走力により、あっという間に馬車から遠ざかる。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加