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そのリラの前に、巨大な影が立ち塞がる。
それは鉄甲騎ディアブラであった。
幸いなことに、それはリラを狙っているわけではない。
衛兵の姿をした、彩色豊かな鉄巨人は、二騎の脚甲騎を相手に苦戦していた。
どうやら目論見が外れ、攻撃目標として集中していたはずであった小型機の短槍に翻弄され、その隙を突いた鎚矛騎の一方的な猛攻を受けていたのだ。
それでも尚、ディアブラは二騎の敵を相手に奮闘していた。
突き出される槍を躱し、振り下ろされる鎚矛を剣で払いながら、逆転の機会を伺うディアブラ。
武器と武器、そして装甲が火花とともに金属片を散らす。
峡谷の中、互いに押し合い、時に殴り合い、挙句、蹴りまで繰り出す鋼鉄巨人の格闘、動きを止めることのないその足下を回避するのは困難であるが、ここで躊躇する暇はなかった。
転瞬、三騎の動きが止まった。ディアブラが敵の槍を左手で掴み取り、それを小型機ごと自機に引き寄せ、盾にすることで鎚矛騎の動きを止めたのだ。
おそらく、これを逃せば後がない。
タイミングが悪ければ、再び動き出すであろう巨大な足に踏みつぶされる恐れもある。
「……ルピ、しっかり捕まっているのですよ?」
「……リラ!?」
覚悟を決めたリラは、動きを止めた鋼鉄巨人の足下を抜ける。
その刹那、走り抜けた二人を衝撃が襲う。
拘束を振り解いた小型機がディアブラに体当たりを仕掛け、それにより蹌踉めいた足が逃げる二人の側に踏み下ろされたのだ。
間一髪であった――
その背で声にならない悲鳴を上げるルピを背負ったまま、リラは振り向かずに、そのまま戦場を離脱する。
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