人狩りども

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人狩りども

 シャムル王都から程良く離れた森の中―― 「〈ディアブラ〉と〈サタナーン〉が、ようやく到着ですね……」  吟遊詩人を自称していたスレイドラは手下と思われる男達と共に、駆動音を立てて力強く歩いてくる、鋼鉄の機械巨人二騎を見上げていた。 「ようやく、出発の準備が整いますなぁ、お(かしら)……」 「これからは〈大使殿〉と呼ぶように言った筈ですが……今から言い慣れないと、肝心なところでボロが出ますよ?」 「それにしても、お(かしら)……」  窘められて尚、言葉が改まらない腹心テンプが感じている不安を、スレイドラは、特に気にすることなく(うそぶ)く。 「何、このくらいの方が、ハッタリが利くものですよ。それと、大使殿です!」  当然、もう一度呼び名を訂正させることを忘れてはいない。  〈スレイドラ大使殿〉は、吟遊詩人を名乗っていたときと衣装をがらりと変え、刺繍(ししゅう)で飾られた袖付きの外套(マント)に細い洋袴(ズボン)、鍔の広い帽子、更には蛇腹状の襟巻きまで身に着けている。  旅装の西方貴族にしても、少々派手である。  この男、スレイドラは当然ながら、本物の貴族ではない。     
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