人ならざるモノたち

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人ならざるモノたち

「あなたたちも、捕まっちゃったの?」  そして、物語の冒頭に戻る――  馬車が動き始めて(しばら)く経ち、不安と寂しさが表に出たのか、セレイが改めてその場の全員――特に、後から入れられた二人に声を掛けるのだが…… 「ヒッ!」  声を掛けられ、反射的にセレイを見た小柄の少女が悲鳴を上げ、それを見たロウの少女は怯える少女を庇うように、その華奢な身体を自分の胸元に抱き寄せる。 「ごめん、驚かしちゃった?」  すぐに謝るセレイであったが、それでも小柄の少女は怯えたままだ。 「……キョウチョウ!」 「へ?」  少女が呟いた言葉の意味を、セレイは理解出来なかった。 「魔……」 「そいつはツバサビトだ。魔物じゃねぇ!」  直後、ロウの少女が呟こうとした言葉を、ビョウの少年がそれを遮る。  キョウチョウ――〈凶鳥〉と呼ばれるそれは、西方に伝わる魔物〈ハルピュイア〉と同じく、女性の頭部と胸部を首から上に乗せた鳥の怪物で、ツバサビトは(まれ)に、そのような存在と誤認されることがある。これまで経験のないセレイは知る事はないのだが、言葉の雰囲気から、自分を怯える理由を何となく理解した。 「……アタシ、魔物じゃないよ!? ツバサビトのセレイだよ!」 「だから、そう言ってやったじゃねぇか! それに、名前は聞いてねぇ!」  まるで、自分が非難されたかのように突っかかる少年の言葉に、ようやく事態を把握(はあく)したのか、ロウの少女がセレイに向けて謝罪の言葉を告げる。 「ごめんなさい、この子が怯えたので、つい……私はリラ。見ての通り、ケモノビトのロウです……」  リラと名乗った少女は、一息入れてから、再び口を開く。 「……この子、ツバサビトを見るのは初めてなの。  私達は、ここから東の……大きな砂漠の側にある小さな村に暮らしていたのですが、突然、兇賊(きょうぞく)に襲われて、(さら)われてきたのです……」  そう言ってから、リラは傍らで尚も震える少女の頭を撫でる。 「……この子は村で保護していた〈コダマビト〉……名前はルピと言います」
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