てんさらばさら

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 妖怪の中でも鬼なんて知らない者の居ないモノ、伝説に上がるような怪に出会えるのかと思うと、教壇に立ってもいいなと思った。狸に化かされたことのある圭介だからこそ、狐も寄ってくるのではないかと言う推測。  狸の宿敵と言えば狐でなかろうか。  さて置き。  蝉の声が飽きるほど響く。この叫びで異性を呼び込もうとする、彼らの熱意の所為で、夏は暑いのでは無いかと心のどこかで思い始めた頃、校舎は姿を見せた。 木造三階建ての校舎、見える全ての窓が開けられていることから、この学校には冷房の類は無いのかもしれない。  グラウンドと呼ぶよりは園庭と呼びたくなるのは、中学校には珍しく、鉄棒やブランコが並んでいるからだろう。サッカーゴールはグラウンドの隅で茶色く錆びている。最近見なくなった二宮金次郎の像が凛々しくグラウンドを見渡している。 二宮金次郎像が二体並んでいる。 一つには天川中学校の文字、もう一つには天川小学校の文字、金次郎が歩き、中学まで来たのか。 金次郎も小学校を卒業し、中学高校大学と就学している最中なのか取り立てて聞く必要も無さそうだ。  遠くから歩く圭介の姿が見えたのか、玄関につくと教師と思われる女性が職員室までの案内を更に校長室、教師たちへの挨拶を早々に済ませる。     
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