てんさらばさら

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 床のきしむ音が、幼い頃の古い校舎を思い出させた。幼い頃から不思議なモノに出くわす機会が多かった。今よりも、幼い頃の方が機会は多かったのではないだろうか。尤もいくら何を言ったところで狸に騙され友人と恋人を同時に無くすような災害に出くわす事となるのであれば、アレらと関わりを持つべきではなかった。 それどころかアレらを友と勘違いしていた所為で、疲れてしまったのが僕だ。 憑かれてしまっていたのだろう。  歩き疲れた僕の、教師生活が再び始まる。  放課後のピアノと動く絵画  圭介のクラスは十人の生徒が在籍する。一、二年は一クラスのみ、三年は二クラスと合計生徒数も五十人に満たない小さな中学校ではあるが、学校が出来た頃は生徒の数は千人に近かったと校長は圭介に伝えていた。  この一年一組には、二名の男子生徒と、八名の女子生徒とクラスの主導権は完全に女子生徒が握っている事が分かる。その上で少ない男子生徒の席が空いたままになっているのだから、女子校に男子一人の今日は少年にとっては大変な日か。 そのクラスのまとめ役をするのが鴻池(こうのいけ)水(すい)華(か)である。 茶系の髪は地毛だろう、髪を二本結んでいる。鈴形の装飾の着いたゴム紐が時々姿を見せる。動くたびに鈴の音が聞こえる訳では無いので、飾りなのだろう。 中学一年生らしく、足は真っ直ぐにカモシカを例えたくなる、細く長い脚。やや吊り上がった目から伝わるのは、気が強そうだなくらいか。     
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