1.イベントの重要度

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「広瀬……盗み聞きか?」 走り去った彼女の背中をおろおろしながら見送っていると、えらくドスの効いた低い声で名前を呼ばれた。 「違うわよ通りかかっただけ!」 失礼な! って第一声が聞こえてから足は止まってたけどさ、わざとじゃない。 だってあれは止まるでしょ。 「それより来栖くん、早く追いかけた方がいいよ!」 来栖の顔を見れば、見事に右頬に赤い紅葉が咲いている。 戸川菜穂はどうやら左利きのようだ。 「こういうのはすぐに解決した方がいいって」 「いや。いい、もう」 「は? いいわけないでしょ彼女でしょ!?」 「彼女ならなんでも最優先なのかよ? もういいって」 来栖が、その場にしゃがみ込んで背中を丸めた。 いうならば、吹き荒れていたブリザードが、ひゅるるる、と萎んでいくイメージだ。 クールで来るもの拒まず去るもの追わず。 冷ややかな態度で、女が定着しない。 そんな「噂話」だった。 これが来栖和真か? 「……疲れた」 うん。 私の目にも、今、ただ疲れた男がそこにいるだけだった。 何があった来栖和真。
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