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なんだろう。
決して来栖も、極端な我儘を言ってるようにも思えないのに、何かこう、納得がいかない。
「まあ、でもさ。いい大人が付き合ってこんなしょうもない別れ方しないでちゃんと話しなよ」
「わかってる。そのうち向こうから連絡してくる」
「それ! そういうのよ!」
わかった、ようやく掴めて来た気がする。
来栖を責め立てた彼女は、確かに少々メンドクサイ感じもあったが、一緒に居たいっていうのが第三者の私にも伝わってきた。
「普通さ。彼女怒らせたりしたらもうちょい焦るでしょうよ、涼しい顔ばっかしてるから彼女もヒートアップすんのよ!」
クール過ぎるのだこいつは、と結論付けようとしたところで、背後からポンっと背中を叩かれた。
「ヒートアップしてんのはお前だろ。っつか珍しいペアだな驚いたわ」
ようやく緩衝材が到着した。
すっかり忘れてた。
来栖の方も、後ろを振り向いて驚いた顔をする。
「緩衝材って、小野田のことか」
「そ。うちらよく一緒に飲むから」
商品開発部の小野田公一。
大学ではアメフトをやってたらしい。
がっしりとした大きな体格だが、にかっと笑った顔はちょっと童顔。
性格も穏やかなこの同期は、私の今一番気心の知れた飲み友達だ。
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