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梅雨の時期に
「ホント嫌になる。どうしてあんたなんかと付き合ってたんだろな」
雨が激しく振る中、車の外と中で雨よりも冷たい言葉を吐く。相手の顔は無表情だ。
俺の体は冷たい雨に打たれ、もう感覚がない。
車の中から、細く白い煙が外へと流れてくる。その煙は俺の喉へと絡みついた。
「最後に何か言う事はないのかよ」
「やっぱり男は無理だ」
男から漏れた爆弾。
すっと車の窓が閉まる。俺はただ去って行く車を眺めていた。
「なんだそれ」
ようやく批難する言葉が出てきた時にはもう車の姿は完全に見えなくなっていた。
ガサリと、コンビニ袋が音を立てた。
男は無理って、なんだよそれ。
ひどい文句だ。俺はどうやっても女にはなれないし、男だとわかっていて付き合ってたのにさ。
「もっとマシな言い方あんだろ」
いつまでも雨の中に立ち尽くしているわけにはいかない。今更だなぁと思いながらも傘を差し、コンビニ袋をがさがささせながら公園の駐車場を出た。
本当に酷い。この公園は街から少し離れたところにある。静かで暗い、昼間でも人気のない公園だ。そんな公園に、あいつは俺を置き去りにした。
「ひっどい男だ」
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