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夕方のコンビニ勤務は地味に忙しい。大量に入荷してくる商品をさばきながら、仕事や学校帰りの客をさばくのだ。なのにこの時間はいつも人手が足りず負担がのしかかる。
あっという間に過ぎる時間に舌打ちしたくなる気分だ。おかげで根岸のことを考えずには済んだが。
今日は深夜バイトはない。帰りたくないなと、くたくたの体を引き摺りながら店を出た。
こんな街中では明るすぎて星なんか見えないのに空を見上げて、センチメンタルな気分を味わった。
馬鹿みたいだ、ほんと馬鹿だ。
ぐるぐると脳内を飛び回る馬と鹿の二文字に大ダメージを喰らいながら歩き出したその時、目の前に大きな影が立ちはだかった。
いきなり目の前に飛び出してくるなよと心の中で悪態をつきながら顔を上げたら、見たことのある顔のやつだった。
根岸だ。両手を体の横で強く握りしめて、仁王立ちでこちらを見下ろしている。
馬鹿の二文字が頭の中を占拠している自分の思考はうまく働いておらず、ただ茫然と、身長高いやつはいいよなと口に出していた。
「なに言ってるの、勇さん」
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