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「じゃあどうして? どうして俺を追い出そうとするの」
最後は尻つぼみになっていた。辛うじて聞こえるほどの声量。
手を差し伸べたくなるような表情と声、雰囲気に、ぐっと耐える。握りしめた手が痛い。
「ゲイ」
ぽつりと、俯いた根岸の頭に向かって零した。
ぴたりと動きを止めた根岸がゆっくりと頭を上げる。上目遣いで、どういうことだとこちらを確認しているようだ。だから俺は重ねて言った。
「ゲイ。同性愛者なの、俺。男にしか興味ないんだよ」
あっさりを装って言えば、根岸は一度口を開き、しかし言葉が出ないようでそのまま閉じた。
目は雄弁だ。信じられないと、嘘だと言ってくれと言わんばかりに懇願してくる。
ズキリズキリと心臓が痛むが、今だけだとぐっと腹に力を込めた。じゃないと立っていられない。
「性的にって意味だぞ、わかるよな」
反応はない。まだ衝撃に思考が回っていないのだろう。
待ってやるほど優しくない俺は畳みかける。
「男だったら誰でもいいってわけじゃないぞ、いっとくけど。だからしばらくならいてもいいって言ったんだ。だけどさ、やっぱり恋しくなってくるわけよ、男だからさ」
同じ男なら、わかるだろ?
口を歪め言ってやれば、びくりと体を震わせた。
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