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秋から冬へ、体温恋しく
「いらっしゃいませー」
やる気のない店員の声が店内に響く。品出しをしながら俺も声を出すが、俺の声も大概だろう。深夜なんてほとんど客が来ないから怒られることはないが。
今人気のアイドルが笑みを浮かべている、華やかなパッケージのお菓子をひとつひとつ並べていく。
俺も女だったらなぁとは思わないが、こんな風に笑顔でいられる普通の人でありたかった。
立ち上がり、折りコンをしまう。
「野崎さん、ちょっとトイレいってきます」
今日のパートナーに声を掛け、向かった。
体が重い。疲れが溜まっているのはわかっているがこの体の重さにはほかにも心当たりがあり、うんざりした気持ちで額に手を当てた。
熱い。最悪だ。
洗面台に手をつき、項垂れる。
「ホント、俺、ひどいな」
顔を上げると目の前の鏡には顔色の悪い男がいる。言えないことを溜め込み、人生どうにでもなれと捨てかけている男だ。
怖くなって、自らの頬をパチンと叩いた。
カチャリと背後のドアが開く。そういえば仕事中だったと慌てて背筋を伸ばし、いらっしゃいませと声を掛けようと振り返った。
「あ……」
息をのむ。そこにいたのは客じゃない。根岸だった。
「勇さん……」
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