梅雨の時期に

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 アパートに入るや否や、俺が持っているコンビニ袋に飛びつきそうな男をなんとか宥め風呂場へと押し込むと、とりあえずタオルで簡単に拭いて着替え、インスタントの味噌汁を二人分と、冷凍ご飯をチンして作ったお茶漬けを用意した。  さすがに今日はまともに夕飯を食べられそうにない。腹は盛大に鳴っているが。  勢いが強くなった雨を眺めながら、大きくため息をついた。 「あ、あの、お風呂、ありがとうございました……」    風呂から出てきたのか、腰にフェイスタオルを一枚巻いただけの男が所在なさげに立っている。 「そこ、座ってろ」    座布団なんてものはない。畳の上に座った男は、窓の外をじっと見つめている。服の用意をしてやりながら、男を観察した。  無精髭と長い前髪のせいで風呂上がりでも小汚らしいが、きちんと整えたらそれなりになりそうだ。しかし問題は体のほうか。  肩にやけどらしき痕と打僕痕。  左胸の上にあるのは切り傷。  両腕には煙草を押し付けられたような痕がいくつもあり、青痣は体中にあった。どれも新しそうだ。よく見れば口角も少し赤くなっているし、長い髪からチラリと見える瞼も腫れている気がする。それに骨の浮いた胸。     
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