95人が本棚に入れています
本棚に追加
人の気配がこんなにも安心できるなんて。こちらが泣きそうになってしまった。
「はい。今日もお疲れ様」
コーヒーを手渡され、受け取る。
マグカップ越しにじんわりと熱が伝わり、体の力が抜けて行くのを感じた。
「あのね、勇さん」
予想以上に穏やかな声だ。
考えてたんだと、彼は言う。表情は声色と同様にとても穏やかだ。
「俺は勇さんと一緒にいたい。なぜかっていうと、とても落ち着くから。どうして落ち着くんだろう? そうだ、勇さんは怒鳴らない。否定しない。まるごと受け入れてくれて、そっとしていてくれる」
「そっとしておいたのは、面倒ごとに巻き込まれたくなかったからだ」
「そうだったねぇ」
否定しても信じていないのだろう、へらりと笑っている。
「カフェにもね、そんな人はいっぱいいるんだ。みんな俺を俺として扱ってくれる。嬉しい。でも、勇さんみたいに、心地良いって感じることが出来る人は他にいなかった」
話を聞きながら、落ち着かなくてコーヒーに口を付けた。
少し冷めてきている。それでも急いで飲み干せないのは、俺が落ち着かないからだ。
「ね、勇さん。俺ね、たぶん勇さんのことが好き」
えへへと、目の前の大型犬が尻尾を振っている錯覚が見える。
最初のコメントを投稿しよう!