秋から冬へ、体温恋しく

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 人の気配がこんなにも安心できるなんて。こちらが泣きそうになってしまった。 「はい。今日もお疲れ様」    コーヒーを手渡され、受け取る。  マグカップ越しにじんわりと熱が伝わり、体の力が抜けて行くのを感じた。 「あのね、勇さん」    予想以上に穏やかな声だ。  考えてたんだと、彼は言う。表情は声色と同様にとても穏やかだ。 「俺は勇さんと一緒にいたい。なぜかっていうと、とても落ち着くから。どうして落ち着くんだろう? そうだ、勇さんは怒鳴らない。否定しない。まるごと受け入れてくれて、そっとしていてくれる」 「そっとしておいたのは、面倒ごとに巻き込まれたくなかったからだ」 「そうだったねぇ」    否定しても信じていないのだろう、へらりと笑っている。 「カフェにもね、そんな人はいっぱいいるんだ。みんな俺を俺として扱ってくれる。嬉しい。でも、勇さんみたいに、心地良いって感じることが出来る人は他にいなかった」    話を聞きながら、落ち着かなくてコーヒーに口を付けた。  少し冷めてきている。それでも急いで飲み干せないのは、俺が落ち着かないからだ。 「ね、勇さん。俺ね、たぶん勇さんのことが好き」    えへへと、目の前の大型犬が尻尾を振っている錯覚が見える。     
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