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「もうヒビが入ってるよ! 新調しよう、ケガしちゃう。それに俺、お揃いのお茶碗って憧れだったんだよね~」
新調しようというわりには、そのヒビの入った茶碗を愛おしそうに掲げている。きっと大事に残しておくんだろうな。
「わかった、わかった。一緒に選びに行こうな」
ぽんぽんと頭を叩いてやれば、やったと抱きつかれてしまった。
「お、お前! ほんと危ないから! 何度言ったらわかるんだよ、急に抱きついてくるなって! 子供でも何度も言えば理解するぞ、お前は何歳だ!」
「え、昨日で二十歳になったよ」
「は? え、昨日?」
「うん」
「ちょっと待て、二十歳!?」
「うん。勇さんは? 二十五くらい?」
衝撃の事実だ。俺は聞こえない振りをして、荷物をよいしょと持ち上げた。
「教えてよ~」
立ちあがってもべったりくっついて離れない。いい加減鬱陶しい。
「……三十五だよ」
「え?」
「三十五だ!! 悪かったな、おっさんで!」
年下だろうとは思っていたが、まさかそんなにも年下だとは思っていなかった。
二十歳だなんて……しかも、昨日が誕生日だったなんて。
「俺の処女をくれてやったんだからな、今さら別れてくれなんて言われてもそう簡単に別れてやらないからな」
離してやるものか。睨みつけ唸ってやった。
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