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── 夢か……。
公園で寝落ちせず
布団で眠っていた自分を褒めてやりたい。
慌てて飛び起き目覚ましい時計を確認する。
── マズイ……完全に遅刻だ。
いや。もう会社に行く必要が無いんだった。
昨夜の出来事をぼんやり反芻する。
公園で……毛玉が……。
毛玉?
信じられないモノに出会った記憶はある。
でも、それが何だか思い出せない。
脳内に記憶の泡がフツフツと
浮かんでくるのに頭痛と共に
泡が弾けていく。
俺は諦めてもう一度煎餅布団に潜り込む。
すると足元にいつもとは違う
心地よい重みがある事に気がついた。
小さな黒い雄猫。
ウチに転がり込んできた美樹が
唯一残していった置き土産だ。
〈私が拾ったんじゃない。
猫がこの家を選んだの……〉
そんな意味不明な事を言っていたっけ……。
だけど、布団にいるのは
黒い猫だけじゃなかった。
薄いグレーの麻呂眉をした白く若い雌猫。
優しく包み込むように寄り添って
母のように姉のように黒い小さな丸を
慈しむかのように毛づくろいをしている。
このアパートは基本的には
ペットの飼育が禁止されてる。
俺のウチで黒猫の同居が許されたのは
大家の動物好きな娘さんが
特別に許可してくれたからだ。
それでもさすがに二匹となると
ヒンシュクを買うんじゃないだろうか。
しかも俺は今日から無職になる身だ。
弱り果て取りあえず
テレビをつけつつ頭を掻く。
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