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布団の中から窓の外に目をやると、
縁側で何かが反射しているのが見えた。
匍匐前進で進み
うつ伏せのまま窓を開ける。
酒臭かった六畳間に
ほんの少し冷たい秋の風が微かに吹き込む。
昭和な作りのこのアパートは、
一階の部屋にだけに縁側と庭と呼ぶには
狭すぎるスペースが付いている。
縁側には何故か……
手のひらサイズの鯛、
最近どこかで見たような古びた金貨が九枚、
そしてコガネムシがキチンと等間隔に
並べられていた。
テレビでは俺が昨日まで勤めていた会社と
その親会社が莫大な負債を抱えて倒産した
というニュースを繰り返し伝えてた。
どうやら俺が降ろされた船は、
沈んだらしい。
不思議な事に、何かが終わったというより
今……何かが始まるという予感が俺の中で静かに湧き上がってきた。
ケータイに次から次へと着信音がする。
元同僚や美樹からだった。
でも、ぼんやり縁側を見つめる俺の耳には
その時、何も届いていなかった。
奇妙な運命の輪がこの日を境に
ゆっくりと回り始めた。
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