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まるで髪の毛を真ん中で
きっちり分けたような模様。
白いシャツに黒いタキシードを
着ているような八割れ柄の猫が、
前足を揃え一同を見渡すと口を開いた。
「今宵は六十八年振りの極上な満月。
まだ全員お揃いではございませんが、
第四十八回『九生会議』を
始めたいと思います」
ハリのある伸びやかな声だった。
── 感心している場合じゃない!
しゃべってるのは猫じゃないか!
驚きの声が出そうになる口を
両手で慌てて塞ぐ。
気づくと息さえも止めていた。
虫の音が響く中で体を石のように硬くして
俺は必死に沈黙を守った。
「猫は十年生きると人語を話し
十五年生きると神通力を操り、
不思議な力を得ると言い伝えられています。
人は愚かな生き物。いにしえより猫は神。
例外もありますが
人間はそれに仕えるいわば眷属。
彼等は愚かにもそんな事すら
時と共に忘れてしまったのです。
ご存知のように、人が猫を選ぶのではなく
猫こそが人を選ぶのであります」
真ん中分けは、何かを見下すような声で……
それでいてどこか哀しげな顔をして
言葉を続けた。
一体、聞いているのかいないのか
我関せずといわんばかりに
ノンビリ構えている毛玉とは対照的に
俺は全身の神経を八割れに一点集中した。
「選ばれし猫は
九回生まれ変わる能力を持っております。
今宵、記念すべき九回目の生を授かった
ボスに転生経験のある猫達が謁見する為
ここに集いました。皆さんをご紹介しつつ、アノ方の到着をお待ちしましょう」
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