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【アール】
「申し遅れました。
私、商店街の珈琲店『ジェイド』の
店主を秘書に持つアールと申します。
白と黒のシンメトリーな私に魅せられた
アール・デコ好きな店主から是非にと乞われ
今では店の顔となりました。
現世で7回目の転生でございます。
そちらにお座りなのは
某銀行頭取のロシア人とご同居の
エカテリーナ様。
同じく7回目の転生でございます」
【エカテリーナ】
薄雲が晴れて降り注ぐ月の粒子を身にまとう
シルバーグレーの艶やかな毛並み。
ロシアンブルーがスッと姿勢を正した。
瞳の色と同じ薄いブルーグリーンの
大粒な石が首元にキラキラ輝いている。
小さくあくびをすると
蒼猫は再び丸くなった。
【パトラ】
「その隣においでなのが
不動産王と同居されているパトラ様。
6回目の転生でしたね?
エジプトでお生まれの時は
バステト神の名前で
人々に崇められておいででした。
夜は酒を供する店となる我が珈琲店で
人の姿に身をやつしつつ
お忍びでやって来る政財界の方々に
占いを通して道を示していらっしゃいます。
現在日本の政財界を動かしているのは
実質パトラ様なのです」
野性味を残した茶褐色のアビシニアンは
ストレッチでもするかのように
背中を伸ばしながらあくびをした。
クルリと輝く金色のアーモンドアイの下には
クレオパトララインと呼ばれる
アイラインがクッキリと引かれ肩には何故かメタリックな黄金虫がとまっている。
再生・復活のシンボルであるエジプトの
スカラベ代わりなのかもしれない。
舞い降りる、何十年に一度と言われる
スーパームーンのスポットライトに照らされ
一方は黄金色、もう一方は白銀色に
神々しく輝いていた。
後ろで茶と黒が複雑に混ざり合った
サビ猫二匹。
「カナブン大好き。カナブン大好き」
草むらの虫を追っかけながら騒いでいる。
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