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「白虎姐さん。
昔はサバトラ猫じゃなかったの?」
「柿太郎と柿二郎。
さっきから行儀が悪いぞ。
お前達のシッターは
てんで教育がなっていないな。
昔から虎は五百年生きると
白虎になるものなのだ。皆様すみません。
彼等は今回が初めての転生なもので
何もわかっていないのです」
「白虎姐さん。
年を取ると毛皮は変わるの?」
白虎は年齢の事を言われて
面白くなかったのか厭な顔をしながら
大きな塊に金色の目を向けた。
【山爺】
枯れ草が積み重ねられているように
見えていたのは毛むくじゃらで
毛玉だらけの大猫だった。
アールの紹介では9回以上も転生した挙句
寿命というもの自体が無くなったらしい。
仙狸のようなあやかしとなった老猫は
自らを山爺と名乗った。
「儂は今山寺で和尚と住んでおるが
昔は船猫じゃった。南極探査船『宗谷』……
樺太犬タロとジロはやむなく南極に
置いていかれたが儂は珍しき雄の三毛猫。
大事 に連れて帰られた。
あの頃はまだ毛も短い美しい雄猫じゃった」
美しい雄猫の面影は
とうの昔に無くなった山爺は
猫にしては垂れ下がった目を
ゆっくりと細めた。
「山爺なんで?なんで猫が船に乗るの?」
次なる好奇心を満たそうと、サビ猫の
柿太郎と柿二郎が山彦のように騒ぐ。
「食料をネズミから守る為
そして船の守り神として乗ったんじゃ。
かつてイギリスの帝国南極横断探検隊の船に
船大工と一緒に乗船した時は
ミセスチャッピー(大工の嫁)という名で
呼ばれておった。失敬な事に乗組員達は儂を
メスだと勘違いしておったのだ。
その昔『不沈のサム』と呼ばれた猫が
おったが奴の乗船した戦艦は三度も
沈められた。どこが不沈なのやら。
ネズミでさえも事前に沈む船を
予知して逃げ出すというに」
息を潜めて様子を伺っていた俺は
船が沈む山爺の話を複雑な思いで
聞いていた。
── サム……
出港前に逃げ出せば良かったのに。
「白虎姐さんは
鎌倉時代船で中国から経典と共に
日本へ渡って来られたんでしたね?」
「そうさ。アール。
食料をネズミから守るだけじゃァなくて
尊い経典をネズミから守る為に猫が
乗船したもんサ。
そうだ。昔っから黒い猫は船乗り達に
人気があったンだよ」
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