3人が本棚に入れています
本棚に追加
瞬間、鋭い視線を感じた。朝の電車で感じるような、痛いほどの視線。だが妬み嫉みの様な澱んだ感情ではなく、恐怖を感じる視線だった。
美咲はすぐに視線の方に振り向いた。第2校舎の屋上だった。しかし、人影はない。
「どしたの? 美咲?」
紫乃が怪訝そうに聞いてきた。
「見られてた……かも……」
「えー! やだ、ほんとに?」
紫乃も外を見るが、人はいない。
「……逃げたのかなぁ、でもやっぱり美咲って鋭いよねそう言うの」
「うん……まぁ、ね」
美咲は不安を感じたが、カーテンを閉めて着替え始めた。
(何だったんだろ……やだなぁ……)
ちょうどチャイムが鳴る。次の授業の予鈴だ。
ぞろぞろと男子生徒が入ってくる。間一髪、美咲は着替え終えた。
「あっぶね」
「バカかよ、テメーの裸なんぞ見たくもねぇ」
「なんだと山崎、あたしだって紫乃には劣るがそこそこ……」
「中村と比べんなよ月とすっぽん、いや、月とおぼんだわ」
「ぶっ飛ばす!」
男子生徒の言葉に言い返すのが早いか蹴るのが早いか。しかし内心美咲は(言い得て妙だな)と感心していた。
最初のコメントを投稿しよう!