いつもの平穏《 さわがしさ》

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 瞬間、鋭い視線を感じた。朝の電車で感じるような、痛いほどの視線。だが妬み嫉みの様な澱んだ感情ではなく、恐怖を感じる視線だった。  美咲はすぐに視線の方に振り向いた。第2校舎の屋上だった。しかし、人影はない。 「どしたの? 美咲?」  紫乃が怪訝そうに聞いてきた。 「見られてた……かも……」 「えー! やだ、ほんとに?」  紫乃も外を見るが、人はいない。 「……逃げたのかなぁ、でもやっぱり美咲って鋭いよねそう言うの」 「うん……まぁ、ね」  美咲は不安を感じたが、カーテンを閉めて着替え始めた。 (何だったんだろ……やだなぁ……)  ちょうどチャイムが鳴る。次の授業の予鈴だ。  ぞろぞろと男子生徒が入ってくる。間一髪、美咲は着替え終えた。 「あっぶね」 「バカかよ、テメーの裸なんぞ見たくもねぇ」 「なんだと山崎、あたしだって紫乃には劣るがそこそこ……」 「中村と比べんなよ月とすっぽん、いや、月とおぼんだわ」 「ぶっ飛ばす!」  男子生徒の言葉に言い返すのが早いか蹴るのが早いか。しかし内心美咲は(言い得て妙だな)と感心していた。
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