代償

4/9
前へ
/19ページ
次へ
「主ら、雪山を舐めすぎだ。もう川や崖さえ判らねぞ。麓に向かう林道は、ガードレールさえ無いんじゃ。」  言われて表を見ると、既に辺り一面銀世界だ。  しかも、まだまだ雪が止む気配は無い。  確かにこれでは、地元の人でもなければ、あっという間に遭難するかも知れない。 「なら!誰か一緒に行って貰えませんか!?里の人達なら土地勘もあるだろうし!」  僕はそう長さんにお願いした。  確かに今回の先輩の行動は、最初から最後までロクなもんじゃ無いが、だからと言ってこのままじゃ、先輩だけが最悪死ぬかもしれない。  そんな目に遭うほどの悪人でも無い筈だ。  だが、長さんの返答は冷たいものだった。 「断る。言った筈じゃ。ワシらは今晩は一歩も外に出んと。童歌でも歌われとるじゃろう。雪の夜は表に出るなと。」 「あ…」  確かに言われた。  しかし、人の命が掛かっているのだ。  何としても説得しなくてはと、再び話し掛ける。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加