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雪の舞う山中の冷たい空気に鈴が鳴ったような綺麗な声が響き渡り、紅白の巫女服に身を包んだ女性が、山の斜面上方の木の影から現れた。
「…天女?」
「…雪女?」
そう、山中先輩と直井が溢すほど美しい女性が、腰まで伸びた長い髪を風に揺らし、僕達を見下ろしていた。
助けを求めるどころか、3人で見惚れてしまった程だった。
まるで本当にもののけの類いに遭遇したかのように…
「余所者か…ここは主様(ぬしさま)のおわす神域ぞ。早々に立ち去るがよい。」
彼女は僕らを認識すると、そう退去を言い付けてきた。
「待って下さい!僕ら、道に迷ってて!」
そういう僕を見て、巫女は首を傾げる。
「主らは、社(やしろ)を荒らしに来た盗人であろう?」
どうやら、最初に民宿の女将さんに聞いていた地主が奉っているという神社に近付いていたようで、あらぬ疑いをかけられ、慌てて否定した。
「違います!僕ら、本当に迷ってて!」
「では、その荷物はなんじゃ?それは神域で釣った魚ではないのか?それは主様の物じゃ。」
巫女は僕らが持つ魚籠を指差し、そう指摘してきた。
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