幻姫

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「あれは社の守人の一族の里じゃ。事情を話して助けを請うが良い。」  そう言う彼女に全力で頭を下げる。 「ありがとうございます!助かりました!」 「寝る場所くらいは貸してくれよう。帰りの話しは、里の者の話しを良く聞くがいい。」  頭を下げる僕に向かい彼女はそう言うと、僕らに再び背を向けて、来た道を帰ろうとする。 「え!?貴方は帰らないんですか!?」  慌てて声を掛ける僕に彼女は振り向くと、出会って初めて温かい笑みを見せた。 「我の帰る場所は、主様の所だけじゃ。」 「主様って…」  山頂付近にあるという神社の事だろうか? 「主様は主様じゃ。我の一族の守り神。我が全てを捧げるあるじ様じゃ。」  そう言う彼女の笑顔は本当に天女のようで神々しく、一瞬で心を奪われそうになり、思わず呆けてしまう。  そんな僕に彼女が声を掛けてくる。 「ほれ。お主も早く行くといい。」 「え!?あ!」  見ると、山中先輩と直井が、集落への緩やかな斜面を駆け降りていた。 「ふっ。お主、付き合う相手は選んだ方が良いぞ。」  巫女は笑顔でそう含みを持たせた事を言うと、再び歩き出した。 「え!?あ…ありがとうございました!」  僕はもう一度深々と頭を下げたが、彼女はもう振り返る事無く山に消えて行った。
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