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「ありゃワシの孫じゃ。里の者からは【御山の幻姫(まほろひめ)】と呼ばれとる。芹が社から出てくる事はあまり無いんじゃが、雪の降る日だけは、里の人間が山で迷ったりせんように、御山を見て回ってくれとる。有難い話じゃ。」
「幻姫…ってあれですか?童歌の【まほろのひめ】ってフレーズの?」
「そうよ。あの童歌は芹と主様の歌なの。」
言って桜さんがその美声を聞かせてくれ、歌の解説をしてくれた。
「雪の夜は家から出るな~♪
幻の姫に怒られる~♪
幻の姫を怒らすと~♪
杜から主様下りてくる~♪
主様会ったら覚悟しろ~♪
対価は命の他に無し~♪」と…
【もり】は【森】ではなく【社】で、【たいか】は【対価】らしい。
つまり、雪の夜に外を出歩き芹さんを怒らすと、社から主様が現れて、命を失うと言う歌だ。
そう言われると怖い歌だと解る。
勿論、里の方達が言うように、雪山を恐れるが所以の戒めの歌なのだろうが、それに自分達の信仰を組み合わせる事が、余計不気味さを感じる。
話しによると、主様とはこの辺りの大地主である鷹崎家の御曹司らしい。
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