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病室の泰介は、静かに眠っていた。
薬が効いているのだろうか。
思えば、私が高校を卒業と同時に、母は若い男と出て行った。
父は荒れ果て、私が社会人になってからは、ほとんど家にいなくなって。
しばらくして、全く家に帰らなくなった。
それでも私が一生懸命生きてこられたのは、弟の泰介がいたからだと言うのに。
泰介まで失ったら、私はどうしたらいいのだろう。
「うんん……姉ちゃん?」
「泰介……」
私は目を覚ました泰介の手を取った。
「ごめん、姉ちゃん。心配かけて。」
「ううん、いいのよ。」
私はそんな泰介にほっとしたのか、涙がポロッと零れた。
「俺、そんなに悪いの?」
私は、首を横に振った。
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